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2022.11.19

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「農業×ITで新事業を」CEOオーディション合格者 ・佐藤ジャマルさんの想い

「農業×ITで新事業を」CEOオーディション合格者 ・佐藤ジャマルさんの想い

「いずれは農業×ITで新事業を立ち上げたい」そう話すのは、第1回CEOオーディションに参加している佐藤ジャマル氏だ。

もともと、飲食業や不動産業を経て、現在はエンジニアとして活躍している。一時は、ホームレスも経験しているという同氏。なぜ新事業を立ち上げたいのか、CEOオーディションに参加した経緯と共にお話しいただいた。

佐藤 ジャマル氏

ソマリア人の母と日本人の父を持つ。 10歳までケニアで過ごし、その後アメリカ・ミネソタ州に一時的に移住。 日本語・ソマリア語・英語・スワヒリ語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語など7ヶ国語を話すことができる。

CEOオーディション合格後は、農業×ITの新事業で日本へ貢献したい

ジャマル氏が、「農業×ITで新事業を立ち上げたい」と思うようになったのは、自身のルーツと日本の農業が抱える問題を目の当たりにしたからだった。

「僕は、熊本県出身の父とソマリア人の母を持つハーフです。僕自身、このルーツを誇りに思っていて、自分がこの世を去るまでに日本に対して何か残したい気持ちが強いんです」

日本に貢献したいという同氏。自身の親族が熊本で農家を営んでいることもあり、農業に着目したのは自然なことだった。

ジャマル氏が作成したプレゼン資料より抜粋

「今の日本は、日用品や食品、原料などの大半を輸入に頼っている状態です。たとえば食材なども、輸入品の方が安価で、国産のものは比較的高価になりがち。国産のものが売れず、輸入品の方ばかりが売れて、さらにシェアを伸ばしていく。その結果、国内ではあちこちでフードロスが生まれています」

今、国内ではいたるところで、お米をはじめとする作物が売れず、フードロスが発生しているという。売れないからお金を稼げない、すると国内の農家さんは廃業する。その結果、食料自給率がさらに悪化するという悪循環が発生する。ジャマル氏は、この悪循環から早急に脱する必要があると考える。

さらに日本の農業では、ほかにも大きな問題を抱えているとジャマル氏は言った。

「日本の農家は高齢化が著しく、作業を続けるのが難しかったり、後継者が見つからなかったりと問題は山積みです」

こういった問題に対して、作業の機械化や自動化、後継希望者とのマッチングなどのサービスを提供したいと意気込む。

ジャマル氏がCEOオーディションにエントリーしたきっかけ

ジャマル氏がCEOオーディションにエントリーしたのは、偶然見かけたInstagramの広告だったという。

「何か面白いことをやっているな、と感じましたね。どうせ落ちるだろうと思いつつも、仮に落ちてもマイナスになることはないので、思い切ってエントリーしてみました」

気軽に応募したCEOオーディションだったが、エントリー後は徐々に社長になりたいという気持ちが高まっていったという。

ジャマル氏が目指す社長像

「僕のビジョンだけでなく、一緒に働く仲間が実現したい未来をつくれるような会社(環境)を作れる社長になりたいですね」

自身の目指す先だけでなく、同僚や仲間の想いも大切にしたいというジャマル氏。彼の利他的な考え方は、どのようにして醸成されていったのか。

ジャマル氏は、実父の影響が大きいと自身を分析する。

「ケニアに住んでいた頃の話です。父がソマリア内戦から逃れてきた母の親戚や、村の一族をアメリカやヨーロッパに移住させるために、奔走していた時期がありました。日本人の父が一生懸命、見返りを求めずに人助けをしていたのです」

ジャマル氏が社会人になってからの出来事だった。父が懸命に助けた人達から「あなたの父のおかげで家族ができて子供まで授かることができた」といったメッセージをもらったのだ。

「彼らからメッセージを聞いたとき、人を大切にすることで新しい命を繋ぐこともできるんだ、と強い衝撃を受けました」

父の行いが人々の幸せへとつながり、新しい命が誕生するキッカケにもなった。この一件は、ジャマル氏にとってかけがえのない原体験のひとつとなった。

実際この体験は、ジャマル氏の利他的な考え方に大きな影響を与えている。

「数年前に参加した高校の同窓会で仲の良い友人に、「覚えてないと思うけど、俺がお金がなくて困ってたときに、ジャマルが自分のポケットにあるお金を全部あげるって渡してくれたんだよ。だから今日の参加費は俺が払っておいた』と言われました」

自身の何気ない行いが、人に大きな影響を与えることがある、それが確信へと変わる出来事だった。

「父のそういう姿を見てきたからこそ、自然に行っていたのだと思います。だから現在も、私が大切にするモノの第一に『人』が来ているのです」

数々の原体験が今の人柄に繋がっていく

さらにジャマル氏は自身の強みを「人を許せる心を持っていること」だと分析する。

「実は僕が幼少期のころ、母親が暴力的だった時期がありました。小さい頃は恨んでいたのですが、3年ぐらい前に母が他界してしまい、今では許せています。私自身、社会人経験を重ねるうちに、『人にはそれぞれ事情がある。ときには人を傷つけてしまうこともあるだろう』と感じるようになりました。当時の母には、母なりの事情があったんだと」

人を許すことで、ポジティブな発想や行動が生まれるとジャマル氏は考える。

「僕自身も沢山傷つけられてきました。でもそれを許すことで何かがポジティブな方向へ変わることは往々にしてあると思います。許された側は、今回のことを教訓に成長することだってできる。許した上で、今後も関係を持ち続けるかどうかを考えれば良いかと思います」

自分が人を許し、ポジティブなスタンスをとることで、自然と周りの人たちにも伝染していくはず。この好循環を続けていけば、社会は今よりも少し良くなるはずとジャマル氏は笑顔で語る。

ジャマル氏の話のなかには「循環」という言葉が、よく登場する。すべてのことには意味がある。同氏は、そう感じる体験を人よりも多くしているのかもしれない。

ジャマル氏が、CEOオーディションの三次審査の際に、「人生で一番の困難」として、こんなエピソードを掲げていた。

「私は、困難を困難だと捉えないように生活してますが、2019年〜2020年にかけて人生で最も困難だと感じた出来事がありました。ヘッドハンティングされて入社した会社が、入って3ヶ月後に資金ショート。給料が未払いとなり、会社名義の寮を出なければなりませんでした。結果、パソコン1台と4日分の着替えだけを持って半年以上の路上生活をすることに。そんなとき、たくさんの友人や知人が手を差し伸べてくれたんです。そのときのご縁によって、現在のフィアンセとも出会うことができました」

彼女に救われて生活を立て直す事ができたというジャマル氏。そう語る表情から、彼の人柄の良さがにじみ出ていた。

社長になりたい気持ちと情熱、人柄さえあれば、誰もが挑戦できる「CEOオーディション」。そこでプロデューサーを務める社長たちからは、ジャマル氏はどのように映っているのだろうか。

本選を前に、2022年 11月3日に情報経営イノベーション専門職大学で行われた「CEOオーディション Challenge Stage」では、複数の社長から支援を表明されていた。情熱と人柄によって、夢への第一歩を踏み出したジャマル氏。審査後に感想を伺ったので、最後に記しておく。

「CEOオーディション Challenge Stage」の詳細はこちら

「CEOオーディション Challenge Stage」を終えた感想

このような機会を提供してくださり、ただただ感謝しています。発表自体は、早口になっちゃったので、そこは反省点ですね。

今日にいたるまでは、どこかで社長になる覚悟を持ち切れていなかったのですが、オーディションを通じてプロデューサー(審査員)や参加者の方々の熱い想いに触れ、覚悟が固まったような気がします。確実に自分を変えるきっかけになりました。

今回、仮に合格できなかったとしても、とても貴重な経験だったことには間違いありません。皆様、貴重な体験をありがとうございました。

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