笹木 隆之 様
株式会社TBM 常務執行役員 CMO
一般社団法人資源循環推進協議会 事務局長
東京都スタートアップフェロー
「人類の課題解決に取り組む方を増やしたい」その思いから共催パートナーへ
──CEOオーディションのことを知ったきっかけと最初に感じた印象を教えてください。
知ったきっかけは、当社の代表取締役CEOの山崎から「こういう企画あるんやって」と教えていただいたところからでした。
そこから、CEOオーディションの内容を聞いて、本当に驚いたのを今でも覚えています。何に驚いたかというと、社長としての経験・ビジネスプランは不問で社長を全国から輩出していく点です。
あとは、この企画に約700名の方がエントリーしていることを知って、「日本にも社長になりたい人がこんなにたくさんいるんだ」と率直に驚きました。
──CEOオーディションに共催パートナーとして参加することで貴社のどのような課題を解決したいと思っていましたか。
まずは、全国でサステナビリティやGX分野で挑戦する「人類の課題解決に取り組む方」を増やしたいといった部分です。
CEOオーディション – NEXTユニコーン -はその名の通り「ユニコーン企業の社長を生み出すこと」をテーマにしました。国内の現状でいえば、イーロン・マスク氏のように社会課題を解決するために立ち上がる起業家が少ない印象があります。
「持続不可能な社会を可能にしていく」といった、ワクワクする壮大なテーマにチャレンジする人が全国で増えていけばいいなと共催パートナーをするうえで感じていました。
あとは、サステナビリティの領域で取り組んでいる野心的な社長候補の人と接点を持ちたかったことですね。TBMでは「サステナビリティ革命を実現する」という大きな旗印を掲げています。
これまで荒波を乗り越えてきましたが、まだまだ飛躍しなければならないなかで、現在、取り組んでいる新素材を使ったビジネス×資源循環というビジネスだけで終わる会社ではありません。革命を実現するためには、特にはカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーといった分野などで新規事業や新たな共創が特に必要になると思っています。
そういった意味では、サステナビリティ領域に挑戦する方々がTBMのグループ内でより必要となりますし、CEOオーディションを通じて素敵な方と巡り会いたい気持ちが強かったですね。
──ちなみに、サステナビリティ領域へ熱量を持って取り組む方とは、今までどのように出会ってきたのでしょうか?
主に、日々の事業活動や資金調達やアライアンス、共同開発などのときに発信した内容を通じてTBMで取り組んでいることを知っていただき、新たな仲間として加わってもらうという流れが多いですね。
大手新聞の一面に「こういう新素材があって…」や「ユニコーン企業としての評価額がいくらで…」といった内容が記事になることはありました。とはいえ、そういった情報が世の中に出回っても「よし、TBMでチャレンジしよう」と飛び込んでくる方は、今の日本ではなかなか少ない印象があります。
価値提供や情報発信を通じてTBMに触れる人数が増えても、体感値として持続不可能な状況を可能にしていく成長産業の仕事に就きたいと思う方々が増加しているとは言い難く、溝というか、仕事の意義や内容の解像度の高まりが必要に感じています。
──例えばですが、日本人の環境問題に対する意識が世界各国と比べて低いから、環境問題の領域へチャレンジする方が少ないんでしょうか?
日本人の環境に対する意識がどう影響しているかはわかりません。ただ、個人的には環境問題に対する意識の高さは、世界と比べると日本のほうが高いように感じています。
なぜチャレンジする日本人が少ないのかでいえば、不確実性や仕事内容の曖昧性が高いからではないでしょうか。環境問題の解決をど真ん中に据えている企業は、スタートアップが多いという認識です。安定しない・リスクがあるという観点から、一歩踏み出せない日本人が多いのではと感じています。
例えば、アメリカでいえば国全体の新規雇用の半分をスタートアップが創出しており、チャレンジしやすい環境が整っているんです。インドであれば、かつては人気職種が医者やエンジニアでしたが、今ではスタートアップに変わっていると聞いたことがあります。
もちろん、スタートアップはリスクの塊です。しかしながら、安定志向が強い日本の仕事環境の中で、リスクテイクできる仕事であり、そこで働くメンバーが大きな成長を遂げられるというのは、とても限られた貴重な機会だと私は考えています。現状、その価値における理解は、いくつかの国と日本を比べると明らかに足りていないといった印象を受けています。
──社長になることがリスクであるという固定概念を変えて、「人は誰でも社長になれる」世の中を作ることは、まさにCEOオーディションのミッションです。それを踏まえて、CEOオーディションで特に期待していた成果は何でしたか?
やはり、人との出会いに期待していました。特に人間力が高い方との出会いを望んでいましたね。
私でいえば、前職時代、そして、TBMに入社して巡り合ったスタートアップの経営層の方々との接点がありますが、自分がスタートアップ事業者として働くとなったときに、経歴・スキルといったスペック的なところよりも、その方の人柄が特に重要だと思ったんです。
この部分は、TBMの社長の山﨑から学ばさせてもらったことでもありますが、同じく共催パートナーであるTeam Energyの金田さんも非常にこだわられていましたね。
TBMでいえば、不確実性が高く、難易度の高いディープテック領域でチャレンジをし続けているので、ハードルをハングリーに乗り越えていく、人間力に長けた方との出会い、挑戦されている方と出会いたい、という思いが強かったです。
合格者と情報交換・協業の趣旨検討ができている点は大きな収穫
──申し込み開始までの期間や申し込みがスタートしてチャレンジステージ当日までの審査期間で特に大変だったことや印象的なことはありましたか。
振り返ってみると、元々あるCEOオーディションの思想を軸にしながら、企画の価値を高めつつ広めていく点には注力してきましたね。
今回、共催という形で関わるなかで、TBMが持つ繋がりをうまく活かしながら、CEOオーディションが元々有している価値を届けたいという思いがありました。
結果として、テレ東Bizさんサポートのもとメディアで発信する機会やアンバサダーの方の力、日本CEO協会の方が勉強会やセミナーでエントリー数を増やす努力など、いろいろなことを通じてCEOオーディションの価値を多くの方に届けられたのではないかと思います。
本当に携わってくれた方々には、感謝しかありません。
──実際に共催してみて感じたCEOオーディションで得られた成果についてお聞かせください。
チャレンジステージで合格した方々との情報交換を含め、協業を検討できている点は大きな成果だと感じています。僕らの今後のビジネス拡大にも繋がる期待があるので、これからが楽しみです。
──オーディションを通じて特に印象に残っている合格者を教えてください。
山崎がチャレンジステージでブラックカードを出した4名の方とは、より密にコミュニケーションをとらせていただいています。オーディション終了後から、打ち合わせを重ねている段階です。
合格者の方々とは様々なお付き合いが続いてます。例えば、合格者の中で、脱炭素・資源循環やカーボンクレジット、ブルーカーボンなど、サステナビリティの分野で専門的な知見を持たれている方とは、TBMが事務局になっている一般社団法人の資源循環推進協議会に入会していただいています。
審査結果に関係なく、なんらかの形で合格者とTBMの活動と一緒になって活動できている部分は本当に嬉しいところです。
──CEOオーディションに共催パートナーとして参加することの魅力やメリットについて、どのように感じていますか。
共催パートナーになるメリットは、合格した方々との出会いや新規ビジネス・新会社の創出に繋がる可能性がある部分ではないでしょうか。
あとは、企画元である日本CEO協会やTeam Energyの方々と一緒に取り組めることが共催パートナーとして参加する価値だと思います。社長を志している方々の夢を束ねることに取り組まれていますし、一緒に活動するなかで、日本CEO協会やTeam Energyの方々から学びや刺激をいただく部分が本当に多かったです。
CEOオーディションの価値を広め、さらなる社会的インパクトを目指して
──CEOオーディションが今後さらに発展するためには、どのような工夫や改良が必要だとお考えですか?
全国各地にCEOオーディションのことを知ってもらうことが必要じゃないでしょうか。今回のオーディションを通じて、潜在的に「社長になってみたい」と思っている人が多い印象を受けました。
小学校の卒業文集で「社長になりたい!」と書いて実現した方がいる一方で、そうでない方も存在しますよね。なので、潜在性はすごくあると思うんですよ。子どもの頃に書いた夢って、今の仕事や生活にリンクしている部分がきっとどこかにありますし。
今後、日本経済の活気を取り戻していくためには、保守的や安定とかではない前向きなエネルギーが間違いなく必要になります。
大きなインパクトの創出を目指した社長になると、大変なことも本当にたくさんあると思いますが、やってみなければ感じられないことも多いと思います。ただ、プレッシャーや責任感がある分、事業を成功させたときの感動は間違いなく大きいといえます。
CEOオーディションがもっと知れ渡り、多くの方が社長になる経験を得られると、日本のエネルギーが確実に増していくと思うんですね。そういう発展をしていくためには、このオーディションをもっと多くの方に広めていけるといいのではと考えております。
あとは、CEOオーディションのポリシーや哲学を貫き通していただきながら、企画のフォーマットを磨いていき、CEOオーディションがチャレンジャーを創出していく生きた仕組みとして根付いていかれるのが理想ですね。
──今後の取り組みについての展望や目標を教えてください。
改めて、TBMはサステナビリティの領域で、本当に大きな市場と向き合っています。例を出すなら、プラスチックや紙を代替するLIMEX(ライメックス)という低炭素素材のビジネスは、今後、世界で人口が増加し、従来の素材の代替や資源保全に対する意識が高まる中で、3桁兆円のマーケットが存在しています。ほかにも、サーキュラーエコノミーの市場も、2030年には4.5兆ドルの規模になると推測されています。そういった市場を知ることで「そこを自ら掴みにいって、獲得するんだ」という熱量を持つ方が、CEOオーディションに勝ち残っていた印象があります。
これからの日本を考えると、社会に対してインパクトを与えたいと思う人が増えることが望ましいと考えています。CEOオーディションを通じて生まれる社長とともに価値を創造していくことを、TBMとしても引き続きさまざまな形でサポートしていきたいと考えています。