共催パートナーについて

2024.11.07

INTERVIEW

延岡への熱い想いが集まったオーディション。目指したのは「起業潜在層の掘り起こし」

延岡への熱い想いが集まったオーディション。目指したのは「起業潜在層の掘り起こし」

2024年4月に宮崎県延岡市で行われた「CEO AUDITION ~延岡の社長プロデュース~」。

延岡への熱い想いを持った参加者のなかからオーディションが行われ、18名の合格者が誕生しました。

CEOオーディションとしても初の試みとなった、行政との共催イベント。

今回は共催に至った経緯や感想、そして今後の展望を含めて、今回のイベントの担当者である延岡市役所の黒木様、奥野様にお話をうかがいました。

プロフィール

延岡市役所
商工観光文化部 工業振興課
黒木 一秀 様(写真左)
奥野 貴大 様(写真右)

潜在ニーズの掘り起こしが延岡になかった事業を生むかもしれない

ーーまずはCEOオーディションのことを知ったきっかけと、最初に抱いた印象を教えてください。

黒木 一秀様(以下・黒木)

CEOオーディションについては、包括連携協定を締結させてもらっている髙木ビル様から、この企画を知りました。印象はというと……正直「本当なのかな?」と訝しんだのを覚えています(笑)。

金田 隼人氏(以下・金田)

今回、審査員も担っていただいている髙木社長と前田社長から延岡市のことをご紹介いただいて、読谷山市長へ表敬訪問を行いました。その際にCEOオーディションの話をしたところ非常に盛り上がり「ぜひ何かやりたい!」とのことで黒木さんをご紹介いただいたのが最初ですね。

延岡市でもさまざまな起業創業支援をやられているとお聞きしていたので、多くの方に延岡市の取り組みを知ってもらえる機会に、共存できる形で進めていければとお話ししました。

奥野 貴大 様(以下・奥野)

ビジネスプランなしでもOK、さらにオーディション形式で創業希望者を募るのは初めての試みです。私の印象としては「どんな方たちが参加されるんだろう?」というのがありましたね。

ーーどんな課題解決のために「延岡の社長」プロデュース事業を実施することになりましたか?

黒木

金田さんからCEOオーディションのお話をいただいた時に、いろいろ関係機関にも聞き取りを行いました。すると「延岡市の創業者はおとなしめで、自分の可能な範囲での事業計画を立てていらっしゃる方が多い」との話が多かったんです。ただしそのぶん「もしかすると潜在的なニーズが浮き彫りになる可能性を秘めている」という前向きな意見もいただきました。

今までにない取り組みを行うことによって、これまでになかなか顕在化しなかったニーズが浮き彫りになったり、延岡では発生しえなかった事業が生まれるかもしれない。そういう意味では、本当にやりたい事業を延岡市ではできなかった、という課題を解決できると感じました。

ーー顕在化している方に対しては支援ができても、潜在ニーズを持っている人には支援が難しいですよね。そんな今までリーチできなかった人にも「CEOオーディション」を通じて創業支援ができると感じてくださったんですね。

金田

この考え方は、CEOオーディションの意図にすごく合致していますよね。自らの意思を持って起業創業に向けて行動できている人を「顕在的な層」として我々も位置づけています。一方でそういう想いがあっても、なかなか周りに話せる相手がいないとか、きっかけがなくて閉じ込めてしまっている人もいれば、個人で始めた商売や活動をもっと大きくしていきたいけれど術がない……そんな方が結構いるんじゃないか?と思っているんです。この層を「潜在的な層」として捉えています。

今回は延岡市が主催なので「延岡のために自分の力を発揮したい」「延岡の課題を解決したい」という想いを持った人も一定層いるとも思っていました。CEOオーディションは「社長を目指す」というコンセプトですが「新しい挑戦をする」という観点でも捉えられます。オーディションをきっかけに、そういう方とのご縁が顕在化していけば、次につながるのではないかとお伝えしました。

ーーCEOオーディションに期待していたことは?

黒木

市の既存の支援の中に「創業塾」というものがあり、こちらに今まで参加されてこなかった方が参加してくれるようになることに期待をしていました。また、このオーディションをきっかけに市外や県外の「延岡で何かしよう!」という意思を持った方が現れることにも期待をして、取り組みに参加することにしました。

奥野

先輩社長の方々との面談やメンタリングがあるのもいいですよね。地方にはないものの考え方や創業マインドのような部分を、社長の先輩方から教えてもらい、育てていただく。そんなところも期待していました。

予想以上の参加者が応募!「私のためにある企画なのかと思った」との声も

ーー実際に企画がスタートしてからオーディション当日まで、なにか苦労されたことや印象深かったことはありましたか?

黒木

始めるまでは「どんな位置づけでこの事業をするのか」を決めて予算を取って……という行政的な部分での苦労がありました。延岡市は既存の創業塾があり、今回のCEOオーディションも「創業塾へつなげる」というコンセプトで展開したことがよかったのかなと思っています。でも実は、プロジェクトが始まって以降の苦労は特にないんですよね。

ーーCEOオーディションとしても、初めての行政との共催ですよね。これは他の行政での取り組みの際にも、説得力のある事例となったのではないでしょうか。

金田

そうですね。でもこれはご縁があってこそのこと。第1回のCEOオーディションで協力いただいた髙木ビルさんにお力添えいただいて、その流れで延岡市もご紹介していただきました。そういう連鎖が自然と起こるようにしたいというのはあります。

私たちとしては、地域が主役・主語として取り組んでいるところに「CEOオーディション」というパッケージを一緒に取り組むという形で進めるのがベストだと考えていて。地域のみなさんが納得して、しっかり報われる形や何か次に繋がる形にしたいという想いで取り組みました。だから私たちも大変だったことはなく、むしろ楽しくやらせていただけたし、毎回毎回の取り組みが新鮮で「いい経験をさせていただいたな」と思ってますね。

黒木

こちらも始まって以降は金田さんをはじめとしたみなさまのご協力もあり、思った以上に人も集まって大きな苦労を感じなかったですね。

金田

私も、思った以上に人が集まったなとは感じました。宮崎日日新聞に広告出稿と延岡市の公式LINE、あと関係各所のご紹介が効きましたね。結果的に広告予算を多分にかけずとも、地域出身の方や地域に根ざした方を中心にエントリーされたのが印象的でした。

黒木

参加者に聞いてみると「人は誰でも社長になれる」「ビジネスプラン不要」というところに惹かれたというのはよく聞きました。コンセプトや設計がすごく浸透しやすく、かなりの確率で情報を見た人の参加につながってたんじゃないかな、というふうに感じてます。

金田

説明会や審査の際にも「私のためにある企画なのではないかと思った」という声や「地元のために力を尽くせないかと思っていて、そのきっかけだと感じた」という声も上がっていました。

延岡への熱い想いを持った参加者がつながった

ーー実際にCEOオーディションを実施してみて、得られた成果はありましたか。

奥野

今1番感じている成果は、潜在的な「社長になりたい」「延岡市で創業したい」「今は延岡市に住んでいないけれど、延岡市で起業したい」という想いを持っている方が、一定数いらっしゃるとわかったことだと思います。

金田

特に感じるのは我々との縁だけではなく、合格者同士でつながりを持ってオフ会を開催したり事業アイデアのブラッシュアップをお互いにしたり、協力し合う関係が生まれていることが、大きな成果なのかなと思っております。「仲間がいなかった」というところがほとんどの方に共通する部分なのかなと思うので、延岡という共通のバックグラウンドを持つ方同士が同期としてつながったのは大きいですよね。

実際に起業したという報告も、1名から受けています。すでに事業活動が始まっていたり、面談させていただいたりもしていて、面談で「事業の解像度が上がってスタートできた」という声もいただいているので、事務局として大きな成果になっているのかなと思っています。

奥野

今金田さんも言っていましたが、交流が盛んになっているのは成果ですよね。参加者同士で情報を共有して、積極的に創業に向かって進んでいると思います。

市長も観覧したチャレンジステージがきっかけで今後の継続も

ーー印象に残っている合格者はいますか。

黒木

実は参加者の中に、小学校から高校まで知っている同級生がいるんです。彼が今やっていることを知るきっかけになったり、これからまた延岡に視点を向けてくれていることを知ったりできたことは、とても印象的でした。

これは当初狙っていた「きっかけ作り」ですよね。域内の人たちを創業に向かわせるというきっかけ作りと、あとは域外の人たちの目線を延岡に向けさせるという狙いが実現された実感がありました。

金田

私も当日立ち会う中で、みなさんのマイストーリーと延岡への想いを表明されていたのが印象的でした。具体的なことはまだ決まっていなくても、地域に対する見方や自分が何かできないかという課題意識を持っている。そのマインドセットっていうのは全員ありましたよね。

逆にお聞きしたいのが、CEOオーディションのチャレンジステージでは、市長も観にこられて前向きな感想をいただきましたが、観覧の経緯やその後の反応を聞いてみたいです。

黒木

チャレンジステージの様子を市長がみて、評価してくれていましたよ。

「今回の取り組みを終わらせずに引き続きの支援が必要」とおっしゃっていました。

ーー実際に開催してみて、黒木さんと奥野さんが考える「CEOオーディションを開催する」メリットはどんなところですか?

奥野

CEOオーディションのノウハウを教示いただきながら事業を進められることは大きな魅力です。それに加えて、先輩社長からの面談をはじめとしてアフターフォローがあるというのはメリットだなと思います。今までの既存機関からの支援だと新たな視点を取り入れにくい面もあったため、参加者にとっても新たな視点やアドバイスをいただけるのはいいことですよね。

黒木

延岡にはないきっかけや支援が受けられるというところは、すごく大きい魅力と思う一方で、ただまだ延岡市としてもやり始めたばかりの事業です。これがどう実を結んでいくのかをしっかり見ながら進めていきたいなと考えております。

ーーではCEOオーディションへの今後の要望やアドバイスなどはありますか?

奥野

アドバイスというほどではないですが、やっぱり参加者の最初の立ち位置がバラバラなので、事業計画の立て方や進め方など、面談をしても難しいと感じている方もいらっしゃいます。ステージごとに参加者募集を行うのか、支援を変えていくのか……今後相談しながら進めたいところです。

今後の展望としては、先ほど金田さんからもありましたが、参加者同士の交流を今期だけではなく2クール目の方々にも広げていけたらいいかなと思います。今回の方々がOBのような感じで、縦にも横にも交流を作っていければいいですね。

金田

おっしゃる通りですね。進め方については一人ひとりの状況に合わせた伴走なのか、サポートなのかというところから、カテゴリー化やクラスター化するみたいなところは検討余地ありと思います。

つながりについても、みんな延岡のことが好きなんだなという想いが共通しているからこそ、共鳴できているのが大きい。合格者の方は今後のロールモデルになって欲しいという想いがありますし、継続していくことで歴代の合格者同士での連鎖反応が起きていくのが目指すべき姿なのかなと思います。

奥野

今後は縦と横のつながりを増やしながら、2クール目も同じくらいもしくはそれ以上の参加者の応募があるといいなと考えています。あとは、参加者募集前にプレイベントも考えています。今までの延岡にはない新しい風を吹かせてくれるような人がどんどん参加して、延岡で新しいことをやっていただけたらいいですね。

延岡をはじめ宮崎県は、県内就職率がかなり低いんです。魅力的な企業はあっても、高校や大学を出ると県外に出てしまう。今回の取り組みを知ってもらい、起業という選択肢もある・延岡市に戻ってくる、そんな方が現れるのを期待したいです。

金田

自ら起業へ向けて行動できる方は、既にある延岡市の創業支援や補助金等を活用して進められるんですよね。その一方で、きっかけがあることによって想いが成就していく・行動に現れていく人もいると思います。後者の方にとっての登竜門的な取り組みとして、今後も延岡市が積極的に起業支援を推進をしていくにあたっては、継続した事業として進めていきたいですね。

もちろんCEOオーディション出身の社長が延岡市で活躍している姿を望んでいますし、「CEOオーディションがあったからこそ事業活動しているんです」と地域内で語れる人が一人でも増えることを目指して、これからもサポートを続けていきます。

まとめ

行政が行う起業支援へコネクトすることを目指して企てられた、今回のCEOオーディション。

大きな手応えや継続の重要性、さらには今後の展望もふくめて前向きな話を多く聞くことができました。

行政との共催という、今後のロールモデルとなり得る取り組みになりました。

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