神戸市と、全国各地で合格者を輩出してきた「CEOオーディション」がタッグを組み、神戸での起業・創業を目指す方をサポートするプログラム「BE Start KOBE produced by CEOオーディション(以下、BE Start KOBE)」が始動する。
今回は、神戸市東京事務所長の武田卓氏と、CEOオーディション総合プロデューサー金田隼人氏に、このプロジェクトの背景や神戸で起業・創業する魅力、そして応募者へのメッセージを伺った。
東京一極集中に対する新たなアプローチ

神戸市東京事務所長 武田卓氏
――まず、「BE Start KOBE」を立ち上げた背景から教えてください。
武田
神戸は全国に先駆けてスタートアップ支援施策に取り組んできましたが、開業率は全国平均程度にとどまっています。背景にはやはり東京一極集中があります。
全国の地方都市でも同じ課題があり、優秀な人材や起業志望者がまず東京に集まる傾向が強いんです。今回のBE Start KOBEは、その流れに変化をもたらし、首都圏で起業・創業を志す方に神戸という選択肢を提示し、実際に来てもらうための挑戦です。
金田
CEOオーディションは2022年に全国版を開催し、2カ月で700名がエントリー。これまで累計で約1,000名が挑戦し、そのうち150名以上が合格しました。
地域版では和歌山や延岡などで開催し、地元金融機関や自治体と連携して多くの合格者を輩出しています。和歌山開催では過去最大級の盛り上がりがあり、合格者がその後事業をスタートさせ、地元メディアでも話題になりました。
首都圏で“神戸で起業・創業する人”を募るのは今回が初めて。地域の挑戦の土壌と首都圏の人材を結びつける新しい流れをつくれると感じています。
神戸で暮らし、働くメリット

CEOオーディション総合プロデューサー 金田隼人氏
――起業・創業の場所として、神戸にはどんな強みがありますか?
武田
神戸は海と山に囲まれ、多くの方から「おしゃれ」や「イメージが良い」と言っていただく都市です。また、住環境においても、「共働き子育てしやすい街ランキング2024」(日本経済新聞社・日経BP)で全国1位に選ばれました。待機児童ゼロ、高校生の通勤定期の無償化、託児機能付きコワーキングスペースの整備など、生活面のサポートが非常に充実しています。
金田
生活基盤が整っていることは、起業家にとって大きな安心材料ですよね。特に家族がいる方にとっては、暮らしの安定が挑戦の前提条件になります。
武田
それに、港町としての歴史が育んだ「外部人材を受け入れるオープンな文化」も特徴です。外国からの文化や技術を取り入れ、それを地域に根付かせてきた歴史があります。この風土は、新しいアイデアやビジネスを受け入れる柔軟性につながっています。
変わり続ける街、神戸

――今の神戸は都市としても大きく変わりつつあるそうですね。
武田
はい。2025年4月には神戸空港が国際化し、三宮では再開発が進行中です。新アリーナ建設や、西日本最大級のバスターミナル整備など、都市機能が大幅にアップデートされています。
駅前の再開発で商業施設やオフィスビルも刷新され、ビジネス拠点としての魅力が格段に高まりつつあります。
金田
都市が成長しているタイミングで挑戦を始めると、自分の事業成長と街の発展がリンクします。変化の波に乗れるのは大きなチャンスですね。
BE Start KOBEならではの手厚い支援
――BE Start KOBEでは、どのような支援が受けられるのでしょうか。
武田
神戸市としては、起業初期の負担を減らし、事業に集中できる環境を整えるために、いくつかの支援を用意しています。
たとえば賃料補助。スタートアップが対象にはなりますが、オフィスの賃料や通信費の一部を補助できるので、立ち上げ初期の固定費を抑え、事業資金を成長投資に回せます。
また、登記費用の半額補助もあります。会社設立時の登録免許税や公証人費用などを軽減でき、法人化までのハードルを下げます。
さらに、行政がハブとなり金融機関や商工会議所とのマッチングも行います。これにより、地域での信用構築や商談機会を早期に得ることができます。
通信インフラ面ではスタートアップ通信費補助もあり、インターネットや通信設備の負担を軽減しますので、リモートワークやオンライン事業運営を行う方には特に有効です。
加えて、神戸ならではの取り組みとして「こうべぐらしコンシェルジュ」による移住支援も行っています。住まい探しや学校区の情報、生活費の目安など、日常の暮らしに関わる部分も個別に相談できるので、事業と生活基盤づくりを同時に進められるのが特徴です。
金田
CEOオーディションとしては、エントリー段階から壁打ちやメンタリングを行い、第一線で活躍する経営者による直接指導や、事業計画に応じた出資の機会も用意しています。起業・創業後の成長を見据えた伴走支援も特徴で、設立時から資金面や事業運営の両面でサポートする体制が整っています。
武田
移住はビジネスだけでなく生活全般がセットになります。家賃相場や学校環境も含めて、一緒に最適な場所を探していきます。東京から来る方が最初に抱える不安を、できる限り取り除く体制です。
求めるのは「想いを持つ挑戦者」

――どんな方に参加してほしいですか?
武田
スタートアップに限らず、神戸で何かをやってみたいという思いを持つ方です。特にものづくり、食、医療といった地場産業と親和性のある事業に挑戦したい方は歓迎します。
金田
過去の応募者は大きく3層に分かれます。
1つ目は20代の若手。2つ目は30〜40代前半の経験豊富な社会人。3つ目はキャリア再挑戦を目指す主婦層です。
いずれも、「誰かのために何かをしたい」という想いを持っています。
顔の見える支援と多様な起業スタイルを実現できる街

――神戸で起業・創業する際の特徴や、支援体制について教えてください。
金田
実際、地域で起業・創業するとなると、地場産業に根ざす場合もあれば、自分のペースでじっくり形にしていく方もいますし、子育てと両立しながら挑戦する方もいます。神戸はビジネス拠点としての機能も非常に充実していて、本当にさまざまな形のチャレンジや起業・創業のスタイルを実現できるチャンスがある街だと感じます。
武田
そうですね。神戸では、地元の企業や大学、支援機関などとのネットワークがあり、自治体だけでは補いきれない部分を一緒に支えていけます。スタートアップ支援を進める中で、「こんないいスタートアップがあるけど興味ない?」と気軽に声をかけられる関係性を築いてきました。ビジネスマッチングや紹介がしやすい環境は、事業を進めるうえで非常に有利だと思います。
金田
まさに港町のハブのように、新しい人や事業をつなぐ機能を自治体が担っているという、稀有な地域ですよね。
武田
行政がハブとなってビジネスを推進できるのが神戸の強みです。東京と比べてプレイヤーの数が多すぎず、「誰に相談すればいいのか」が可視化されています。金融機関、大学、経済界など、必要な相手にすぐアクセスできるのは大きな利点です。
金田
これは東京ではなかなか難しいことだと思います。顔が見える関係の中で、挑戦できる環境や支援策があり、「この人に聞けばいい」という信頼のネットワークがあります。身近に一緒に共創してくれるパートナーがいる感覚ですね。
応募を検討する方へのメッセージ
武田
今回、BE Start KOBEは初めての取り組みになりますが、地元で起業・創業したいという思いを持つ方は各地におられると思います。
今は東京一極集中の中で、ヒト・モノ・カネが東京に集まっていますが、ぜひ神戸でのチャレンジも考えてみてください。
神戸には、住環境やビジネス環境など、多くの魅力があります。私たちは全力で神戸での起業・創業を応援します。
スタートアップはもちろん、社会を変えたい、新しいことに挑戦したいという方は、まずは気軽にエントリーしていただければと思います。よろしくお願いします。
金田
BE Start KOBE――――名前のとおり、神戸にはさまざまな「スタート」が詰まっていると考えています。新しく始動する人、再び始動する人、新たな挑戦をする人……、神戸はそうした多様なスタートを後押しできる場所です。
皆さんの新たなスタートを、一緒に神戸で築いていければと思いますし、そのための港町ならではのハブ機能も神戸には充実しています。ぜひ皆さんのチャレンジをお待ちしています。