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Interview

「実践的な教育システムを日本へ」シンガポール出身のクリスさんがCEOオーディションに参加する理由

2022.09.30

「実践的なデジタルマーケディング技術を教える専門学校を日本に作りたい」――第一回CEOオーディションに参加するChristopher Puan(以下、クリス氏)。
クリス氏は、シンガポール国立大学卒業後、現地で3年間、警察官に従事。「若いうちに海外での生活を経験したい」という想いから来日。英会話教室や英語の社内講師として広告代理店に勤務する傍ら、着物の写真館でカメラマンを勤めた。
しかしコロナ禍となり、日本での生活を断念。一時、シンガポールへ帰国し、現地の専門学校でデジタルマーケティング・経営の教授として複数の学校に勤務。そして規制が緩和されたタイミングで再来日を果たした。

スタートアップビザで再来日。CEOオーディションに合格し、デジタルマーケティング専門学校の設立を目指す

現在は、スタートアップビザを取得中。自身で起業をしたのち、経営管理者ビザを申請する予定だ。会社を作るために着々と準備を進めているという。

「スタートアップビザ(外国人創業活動促進事業)」は、外国人の創業を促進するために、国家戦略特区に指定されている福岡市で特例的に認められた制度のこと。
「日本へ戻った今も、デジタルマーケティングに関するコンサルティングをシンガポールの法人に向けてリモートで行っています」

異色の経歴だが、努力家だったクリス氏は、短期間でデジタルマーケティングに関する経験と知識を獲得し、現在は前述のとおり、コンサルティング・講師として活躍している。

だからこそ、日本のデジタルマーケティングの授業に疑問を抱いた。

「日本の多くの専門学校では、デジタルマーケティングを座学で教えています。しかし、ただ教えるだけでは、本当の知識やスキルは得られません。実際に広告なら広告運用を、SNSならSNS運用を、授業でも経験する機会が必要です」

クリス氏がシンガポールで携わっている専門学校では、授業のカリキュラムに実践が組み込まれている。クライアントを相手に施策をプレゼンする機会が提供されているのだ。

「本物のお客様がいる状態だからこそ、得られる知識や経験は多い」

「理論的な側面だけでなく、実践的な技術や知識、実際に練習できるシステムが用意されています。日本の専門学校や大学では、実践的なことを学ぶ機会は少ない。大学によっては、4年生になってやっと少し実践経験を積める場合もあるようですが、それでは足りません」

シンガポールでは当たり前のように行われている、より実践的なカリキュラムを日本でも提供したいとクリス氏は続ける。

「広告の出し方からデジタルマーケティングの戦略まで、基礎から応用までを経験させて、実際に生徒がコンサルティングできるところまで引き上げていく。卒業したときには、デジタルマーケティングを任される人材となっている状態が理想です」

超実践型の専門学校の設立を目指すクリス氏。自身の強みをこう話す。

「人に教える技術には自信があります。さまざまな専門学校で実践的な授業を行ってきましたから。まだ日本では、そういった授業を行っている場所は多くない。この点は競合優位性があると思いますね」

クリス氏がCEOオーディションにエントリーしたきっかけ

クリス氏がCEOオーディションにエントリーしたのは、株式会社Helteの後藤氏にお声をかけてもらったことがきっかけだった。もともとクリス氏は、株式会社Helteが提供するオンラインコミュニケーションサービス「Sail」で日本語学習を続けていた。

後藤氏のインタビュー記事はこちら

https://sailjp.helte.jp/

「僕の日本語が上達したのは、間違いなく『Sail』のおかげです。半年間、毎日5時間は利用していましたから。コスパが本当に良いので、日本語を勉強したい友人にも紹介しています。シンガポールに住んでいるとき、後藤さんとお会いしたこともあります」

後藤氏にCEOオーディションの話を持ちかけられたとき、クリス氏は、「すごく素晴らしい取り組みだ」と感じた。オーディションに合格し、起業した直後からメンターが付く点に感激したという。

「特に海外から来ている僕のような人には、ありがたい副賞ですね。シンガポールにはメンターと呼べる人は複数いますが、日本では信頼できる人に出会うのは難しい。信頼できるメンターがついて、実際の経営者からノウハウを教えてもらえるのは、実に恵まれた環境です」

また日本で起業するにあたり、クリス氏にはもう一つ懸念があった。それが起業に伴う書類の手続きだ。

「シンガポールで起業するのは難しくありません。まず書類の面倒な手続きが必要ない。100%オンラインで完結します。サインも電子で問題ありません」

それだけDX化が進んでいるシンガポールからすれば、日本の煩雑な書類手続きは骨の折れる作業だ。

「シンガポールはまだ建国してから60年経っていない新しい国ですから。手続きもビジネスのやり方も日本と比べて柔軟です。こうした柔軟さも、今回の起業で活かせたらと考えています」

今回のCEOオーディションに合格すれば、起業に伴う申請を代行してもらえる副賞も用意されている。日本のなれない手続きから解放されるのは、海外からの参加者にとっては大きなメリットといえる。

日本で起業したい理由「市場規模」と「教育の在り方」

クリス氏になぜ日本で起業したいのか理由を聞いてみた。

「シンガポールは、人口500万人前後。日本と比べて40分の1しか市場規模がありません。せっかくビジネスを展開するなら、大きな国で挑戦してみたいと思いました。そしてもう一つは、先ほども触れましたが『日本の教育システムを改善したい』という想いです」

デジタルマーケティングに限らず、さまざまなジャンルで教育の方法を変えていきたいとクリス氏は続ける。

「これは、デジタルマーケティングに限った話ではありません。たとえば英語教育。日本では英語を教える授業で日本語が多く使われています。これには賛成できません。シンガポールの場合、英語の授業なら英語、中国語の授業なら中国語を使います。母国語は使いません。授業の進行を母国語でしていたら、どうやって日常会話を学ぶのでしょうか。これでは、語学は身につきません」

まずはデジタルマーケティングから始め、ゆくゆくは日本の教育の在り方の改善にも挑戦したいと意気込むクリス氏。「簡単ではありませんが」と笑う同氏の瞳の奥には強い想いが見て取れた。最後にCEOオーディションにかける想いを伺うとこう答えた。

「『you are not a tree, if you don’t like where you are, move』これは、もし自分が今いる場所が嫌いなら、ほかの場所を探してくださいという意味のことわざです。僕たちは木じゃないので、自由に動けるんです。おかしいと思うことがあったら場所を変えてみる。もちろん、おかしいと思ったことを変えるために動いてみるのも良いでしょう。だから、僕は日本にシンガポールの教育システムを持ってきたい。そしてシンガポールの良いところと日本の良いところ、それぞれを合体させた新しい教育を創り上げたい。そのためにも、今回のCEOオーディションでチャンスをつかみたいと思います。」

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